QAコーナー

ここではよくある質問に簡単にお答えします。

 

 

Q.エビデンスに基づく教育とは何ですか?

 

.勘と経験だけで行う教育ではなく、エビデンスを参考にしながら実践や政策を行っていこうとすることです。

 

   さらに詳しく知りたい方は、「エビデンスに基づく教育(EBE)を学びたい!」 

  をご覧ください。


 

Q.エビデンスに基づく教育のデメリットって何ですか。

 

A.誤解を与えてしまうことです。

 

EBEは、誤解されやすい言葉でもあります。エビデンスのみで実践や政策が決まってしまったり、一定の指導方法のみを支持してしまったりする恐れがあります。エビデンスは本来、意思決定の一つの判断材料でしかありません。エビデンスという言葉によって、一定の権威をもち、「エビデンスのある実践以外、認めない」「EBEは指導のマニュアル化だ」となって理解されてしまうのは、本来のEBEの意味を理解しているとは言えません。

EBEに関する「批判や論争」は,以下の8つに整理することができます。

 

1 エビデンスで人の心はわからない。

2 教育は科学ではない。

3 エビデンスによって特定の指導方法を批判するべきではない。

4 エビデンスは統計的多数者を重視し,少数を切り捨てるものではないか。

5 EBEは指導方法の画一化を招くのではないか。

6 ランダム化比較試験は非倫理的ではないか。

7 EBEやRCTは教育の医療化をいたずらに推し進めるものではないか。

8 エビデンスは大事だが,それだけではいけない。

 

 原田(2015)では,上述の「批判や論争」について一つ一つ丁寧に解説し,EBに対する正しい理解を求めています。

 

 原田隆之、2015、『心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス入門 エビデンスを「まなぶ」「つくる」「つかう」』金剛出版


 

 

実際に挑戦してみようと思うんだけど、まず何から始めればいい?

 

エビデンスは「つくる」「つたえる」「つかう」の3つの流れがあり、それぞれによって取り組む内容が異なります。それぞれ挑戦する内容を簡単に提案させて頂きます。

 

A.エビデンスを「つくる」

 無作為化対照試験(Randamaizu Control Traial:RCT)やシスティマテックレビュー(Systimatic Review:SR)など、「しっかりとしたエビデンスをつくる」ことにできる範囲で挑戦されてはいかがでしょうか。RCTは東京有明医療大学の津谷氏に関係する資料、SRは「システィマテックレビューについて」をご覧ください。今後は、データ利用が促進され、多くの研究者がRCTやSRに取り組むことになるでしょう。

 

A.エビデンスを「つたえる」

 例えば、ウェブサイト上で、エビデンスを数分間のVTRで紹介したり、一枚程度の簡単なレポートにまとめたりするなどです。教師や行政官が簡単にエビデンスを入手できる環境を整えています。医療分野では、名郷直樹氏らがCMEC(Community Medicine Evidence Centerと題して、一般の方にも分かりやすく医療のエビデンスを伝えています。

 

エビデンスを「つかう」

 「SICOや4つの判断材料」で実践や政策を見直してみてはいかがでしょうか。この「SICOと四つのフレームワーク」は、EBEを具現化するためのシンプルな思考ツールです。

 

SICOとは、S(Student)「どんな児童生徒に」、I(Intervention)「どう指導すると」、C(Comparison)「どんな指導と比べて」、O(Outcome)「どんな成果がある(あった)か」を考えることです。

 

つの判断材料とは、「実態」「価値」「エビデンス」「教育者の力量」を明確にして実践や政策の意思決定を行うことです。

 

これらの思考ツールを用いることで、さらに良い実践方法はないかと常に振り返ったり、より現実的で効果的な意思決定を行ったりすることができるようになります。

 

さらに詳しく知りたい方は、お問合せページにて、専門家にご相談して頂くか、限定ページにて、SICOの使い方動画を紹介しています。

 


Q.私の実践はエビデンスに基づいているといえるのでしょうか?
A.エビデンスに基づく教育に取り組んでいる教師は、以下の3つを自分に問うことのできる教師と言われています。
1 自分の指導がうまくいっていない時、何が必要だろうか。
2 自分の指導がうまくいっている時、何か証拠はあるのだろうか?
3 より時間のかからない効果的な指導はないだろうか。
                  参考文献 エビデンスに基づく教育のための3つの質問(EEF)

 

Q. EBEの考えはいつどこではじまったの?

A.1990年代のイギリスです。

 当時、イギリスは、国の財政支出が、それらに見合った社会的な効果を出しているのかといった議論が盛んに行われていました。そのため、「エビデンスに基づく」客観的な意思決定を行おうという考え方が支持されてきました。この「エビデンスに基づく」という考え方は、主観や通例、政治的権力によって実践や政策を決定することに対する不満から、教育や医療分野中心に様々な分野に広がっていきました。EBEを唱えた中心人物は、ケンブリッジ大学のD.H.ハーグリーブス氏でした。ハーグリーブス氏は、1996年に「研究に基づく専門職としての教職―可能性と期待―」という講演を行い、エビデンスに基づく教育の必要性を強調しました。「医療に比べ、教育は、実践の知識基盤が乏しいこと」や、「研究の積み重ねにかけ、研究と実践との関係が薄いこと」を主張しました。この主張は大きな社会的なインパクトを与えました。翌年のブレア労働党政権下では、ハーグリーブス氏の「エビデンスに基づく」という考え方が政策に強く取り入れられることになりました。その後、EBEは、「What is evidence based education?」(Davis:1999)や「Evidence in Education: Linking Research and Policy」(OECD:2007)などで明文化され、国際的な広がりを見せることになりました。

 日本では、2009年になって、先のOECDの報告書が翻訳・刊行されました。「教育とエビデンス:研究と政策の協同に向けて」(岩崎ら)です。翌年には、イギリス、アメリカのエビデンス関係者を集めた国際シンポジウムが国立教育政策研究所で行われました。その後、「教育研究とエビデンス」(大槻ら:2012)や「エビデンスに基づく教育政策」(拓殖ら:2103)、「研究活用の政策学―社会研究とエビデンス―」(惣脇ら:2015)など、EBEに関する書籍が多数出版されるようになりました。2016-2017年には、倉敷教育大臣会合にて、先進国が連携して、エビデンスに基づく教育に取り組んでいく旨が確認されたり、「諸外国における客観的根拠に基づく教育政策の推進に関する状況調査」(文部科学省)が発表されたりするなど、徐々に日本でEBEが知られるようになってきました。